ある残念な出来事(妊娠)

 セミオープンシステムがない時の悲劇。私が立川市内のある病院Xで当直(夜勤)中のこと。23時頃、病院に電話あり。妊娠32週、横浜市に住んでいて、この病院で里帰り分娩予定の方。骨盤位(さかご)にて帝王切開をしなくてはならない方。破水してしまった。この段階で二つ問題があります。(1)早産の時期(36週未満)、(2)来週立川市に帰省する予定でしたが、自宅(横浜市)にいる。
 X病院では早産の分娩には対応しておらず、母体搬送という手段にて総合周産期センター、地域周産期センターといった高度な周産期医療を提供しているところに搬送しなくてはなりません。
 では横浜市で探せばと思いますよね。妊婦健診で通院していた横浜市内の診療所Yは、かつて分娩を扱っていたものの今は外来=妊婦健診のみ。当然の如く夜中の対応はありません。セミオープンシステムがある訳でもなく、言葉通り、時間外の緊急時は自分で病院を探せと。2016年、まだこういうとことあったんです。
 横浜市内で思いつく病院に電話をしましたが、市大は「かかりつけではないので受け入れ不可」、聖マリアンナ医科大学病院の分院は「その住所は遠いのでもっと近くをあたってもらえませんか」。
 杏林大学病院のコーディネーター助産師さんに相談するも(多摩地域ではこういう時にまず相談することになっている)、直接横浜市の自宅から杏林大に搬送できないとのこと。「先生が診て診察しなくてはなりません」。私が診るにしても、横浜市→立川市→三鷹市(またはどこか)と搬送になり、非現実的。
 一時間病院を探すもみつからず。結局、患者さんには救急車を呼んで頂きました。何故、救急車をまず呼ぶ様に言わなかったのか?それは、大学病院で勤務した時の経験からでした。医師から依頼した方が受け入れ先に患者の情報が的確に伝わり良いこと、この国ではすぐ救急車を呼べば良いと考えられているが、救急車を呼ぶと救急隊員が救急車内→本部→病院とかけまくることになり、かえって時間がかかることを知っているからでした。
 東京のセミオープンシステムはとても良い制度だと改めて感じました。
(一部改変しています)

2020年06月02日